2013年12月19日

よかったですよ「ゼロ―――なにもない自分に小さなイチを足していく (堀江貴文氏)」

言わずと知れた「ホリエモン」の著書です。
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私は,あまりこういった指南書を読みません。
○○さんがこう言っているからこうだ,という意見,主張に首肯することは皆無です。
○○さんと他の人は,環境も能力も背景もすべて異なるわけですので,○○さんはこう言っているけれども,私は△△だからこうだ,あるいは,○○さんはこう言っているところ,私も××という点で○○さんと共通項があるため,こうだともいえる,というのが正しい思考だと思います。しかしながら,往々にして,ある人や団体に傾倒すると,そのような思考方法を採らず,発信者を盲信する傾向にあると思います。
信教の自由を否定する気は全くありませんが,宗教,特にカルト宗教などはその傾向にあると思います。

そんな私ですが,「ホリエモン」については,何かしら気になる存在です。
全面的に受入れるつもりはありませんが,「ホリエモン」のいう思考停止も上記傾向を捉えた発言でしょうし,何かしら共感する点も多いです。

よく覚えてはいませんが,おそらく,私が司法試験を目指して迷走中,「ホリエモン」が頭角をあらわしたのだと思います。
ちょうど司法試験に受からない日々を送った私は,IT業界に活路を見出しており,ITに進むか,弁護士となるか,という迷いをもっていたこともあり,司法試験からの逃亡という途の向こうにいたのが「ホリエモン」であり,あこがれの存在であったのかも知れません。

応援したかったのでしょうか,何かしら関わりを持ちたかったのでしょうか。ライブドア株を買って損をしたこともありました。

その後の動きについては,いろいろ思うことがありますが,刑務所から発信されるようになったメーリングリストを購読するようになり,そこで得られた情報は,経営者の方相手の法律相談に大きく役立っていると思います。

そんなわけで,盲信してはいけないという前提で,「ホリエモン」には興味津々なところ,これまで著書を読むことは一度もありませんでした。
「稼ぐが勝ち」
「お金はいつも正しい」
「金持ちになる方法はあるけれど、金持ちになって君はどうするの?」
どれも扇情的で,心をくすぐられるものではなかったからです。

ところが,今回の「ゼロ」は違う雰囲気を感じ,結局は「ホリエモン」のブランディングなんだろう,という疑念を持ちつつも読んでみました。

内容は,「ホリエモン」ではなく,「堀江貴文氏」について書いてある,というものであるように思われました。
極めて当たり前のことやプライベートのうちの一部を書いてあるのですが,「ホリエモン」いや,堀江貴文氏も我々と同じ人間なんだ(笑),と感じさせ,著者もそう書くように,誰にでもチャンスはあるのだというメッセージを感じることができる良書であると思います。

また,これまで,何かしら気になる存在だ,と思っていた理由が分かった気がします。
本書のなかで,死んだらどうなるか,怖い,ということが出てきます。
私も,生まれつき心臓が悪かったからか,小さいころから,死について深く,強く,考えることが多かったです。
4年ほど前に心臓の手術をして,その呪縛から解放されたかに思えましたが,その翌年に父親が急逝し,また,その呪縛がやってきました。
とはいっても,まあ,考えても仕方ないや,と思うようになり,全く呪縛でもないのですが。
このあたりのことは,誰しも考えることでは?と思っていましたが,意外とそうでもないようで,ここに著者との大きな共通項があるのかもしれません。


ところで,人の心を惹き付けるスキームとして,神格化するというものがあると思います。
教祖は,信者とは全く異なる背景を持ち,全く異なる能力を持つという幻想が人を惹き付けるのではないかと思います。
一般人と異なるヒルズ族(古いですが)であり,毎日高級料理を食べ,パーティーをし,高級外車を乗り回し,一般人のようにネクタイをせずに,一般人とは違って権力に楯突く,華美な生活を送る,このようなものがホリエモンブランドであったように思います。
しかしながら,本書では,その前段階,一歩目の踏み出しが重要だということが書いてあり,妙に説得力を感じてしまいました。
私は,真に人の心を惹き付けるのは,神格化することではなく,等身大の姿を見せることではないかなと思います。
最近では,秒速1億円稼ぐ!という方もいらっしゃるようですが,それが事実だとして,興味があるのは,そこに至る過程です。ぜひ明らかにして欲しいものです。


仕事柄,後ろ向きな方と接することが多いです。
後ろ向きになることを決して責めるつもりはありません。
いろいろ困難なことに直面すれば,後ろ向きになってしまうことはむしろ当然です。
でも,堀江氏のように,通常後ろ向きになるような状況でも,前のめりになることにより,その困難を打破できることは多いと思います。多くの人は,「そういう人だから」「自分は違うから」というかもしれません。正に,冒頭で述べた環境も能力も背景もすべて異なる論理です。
しかし,同氏も,環境,能力,背景でそうしているわけではないような気がします。むしろ困難を打破するためにはどうするか?という観点から,意図的に前のめりに「している」のではないでしょうか。

この対処策は,後ろ向きになってしまった人すべてにあてはまると思います。
困難を打破するには,困難を真正面から受け止めて,前向きに考えるほかありません

そんなメッセージを込めて,依頼者の方などにも読んでいただきたい逸冊です。
posted by 水越法律事務所 at 09:51| Comment(0) | 思うこと